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特別企画対談
北洲のサステナブル実験住宅「ベクサス」では、現在、田路教授の監修の元、リチウムイオン蓄電池の実験を行なっています。 電気自動車の実用化も現実味を帯び、関心が高まる蓄電池。これが住宅の中で利用されることによって、ライフスタイルはどう変わり、省エネ・環境問題にどのような貢献ができるのでしょうか。 実験住宅「ベクサス」のリビングルームにて、弊社社長の村上がお話を伺いました。

開催日:2010年7月1日(水)
開催地:サステナブル実験住宅
対談者:
東北大学大学院環境科学研究科
田路 和幸 教授(写真左)
1953年生まれ。学習院大学大学院、米スタンフォード研究所客員研究員などを経て現職。
2008年度の文部科学大臣表彰科学技術賞受賞。
(株)北洲 代表取締役社長/NPO環境エネルギー技術研究所 理事
村上 ひろみ(写真右)
それでは、まず先生のご専門について簡単にご紹介いただけますか。
元々は分析科学、つまり材料の評価を行っていたのですが、東北大学資源工学科(当時)に来て材料開発をやることになりました。そこで、炭素やケイ 素、鉄といった自然の中に豊富にあるものを機能化することにターゲットを絞りました。こういった材料は捨てても地球に戻るだけですから、環境に優しいですよね。
リチウムイオン電池の電極材などを研究するうちに、エネルギーをためられるということの重要性に気づき、そこから今のプロジェクトにつながってきました。
そのテクノロジーを「住宅」に展開されたのはなぜですか。
ライフスタイルの重要性に気づいたことが、大きなきっかけの一つだったと思います。INAXから東北大学にいらっしゃった石田秀輝先生が、ライフス タイルというものをとても重視されています。今までは省エネルギー、環境技術と言っても、企業が頑張るものでしかなく、ユーザーはそれほど関心がありませ んでした。一方、ライフスタイルはユーザーが変えられるものですよね。人間が変わらなければ新しい環境型の社会はできない、ということなのです。
世の中も、自然とそういう考え方に変わりつつあると思います。ですから、我々研究科もテクノロジーだけでなく、社会システムに踏み込んで行かなければなりません。
住宅においては、今後どんなテクノロジーが考えられますか。
画期的なものは、やはり蓄電システムです。今までの鉛やニッケル水素の二次電池は、置いておくと自己放電して電気がなくなってしまうものでした。そ れに対して、リチウムイオン電池は自己放電のスピードがものすごく遅い。これだけが「電気はためられない」という概念を変え、真の蓄電池になりうる電池だ と思いました。
それを低コストで、安全に使えるよう研究を進めています。また、いつでも電気エネルギーを持っておけるということが、ライフスタイルにどん な変化をもたらすのか、これから検証が必要です。北洲さんも蓄電池を使ってみて、是非いろいろなアイディアを出してください。我々とは異なる立場の方が 使ったときに、新しいアイディアが生まれ、新しいライフスタイルにつながっていきます。そうしてどんどん変化させていく中で、それがサステナブルな、環境 型のものになっていくようにすることが重要です。
太陽光発電の買い取りシステムについては、どのようにお考えですか。
普及のために高く買い取りを行うというのは、ひとつの方法です。しかし、太陽光発電の電気は、天候によって大きく出力が変動します。家庭内で使用し た後で余った電力は、電力会社へ戻し売電となりますが、実際電力会社の配線を混ぜ込んでしまうと、太陽光で発電した電気が果たしてどのくらい使われている のか、分からなくなってしまいます。
蓄電池が家庭に入るようになったら、太陽光発電システムで発電した電気を蓄電し、必要なときに自家消費する「地産地消」のほうが、本当の省 エネルギーになるのではないでしょうか。太陽光発電の電気は直流となりますので、交流にして売電するときや、家電で消費するときには変換ロスが生じます。 そのロスが勿体ないので、蓄電池にためることで安定した電気にして、自家消費していくのが理想の姿ですよね。蓄電池の性能は向上していますし、価格も電気 自動車での普及に伴って安くなるでしょう。時代の流れの中で、将来的には「地産地消」の方向に動いていくと思いますよ。
建築においても、今は木材も海外から輸入するのではなく、国産材を「地産地消」することに回帰しています。先日竣工されたエコラボ※1でも、大学が所有する山の杉を活用されたそうですね。
自然の温もりを感じられるということで、その価値が見直されています。殺伐とした時代ですから、学生たちにとっての安らぎの場を作りたいという声もあります。学内では、校舎を始め、ブックショップ、カフェテリアなど、多くの場所で内装材に木が使われていますね。
北洲ハウジングも自然を有効に使い、循環させていく家づくりを目指していますが、もっとそれらを提案していかなければならないと感じています。地域企業としての当社には、どんな役割を期待されますか。
ローカルに展開する企業ならではの、動きの良さを活かしていただきたいですね。環境テクノロジー は、基礎研究をして論文を書くことに止まらず、早く実用化して世の中に出さなければならない性質のものです。そのため実践が不可欠ですが、近いところで実践したほうが当然我々も足を運びやすく、研究の進みが早くなります。
北洲さんには前向きなチャレンジとして受け入れていただけましたし、生活スタイルがきちんとある実験住宅をお持ちだったことも、我々にとってはラッキーでした。実際の生活環境に近いところで実験できる場というのは、なかなか無いんですよ。
そう言っていただけると、とても励まされます。当社としても早く商品化し、皆さんに使っていただけるようにしたいと思います。エコという観点からも、地域に根ざす企業として貢献していきたいですね。
そうですね。ただ、今はエコを謳いながら、本当のところはエコになっていないことも多くあります。批判する気持ちもありますが、その葛藤の中にいながら、皆で解決策を考える場を作ることが大事だと思います。
我々の蓄電システムも、そうした葛藤の中でやっていますよ。コストについてはメーカーと常に相談していますし、ユーザーの自己負担を減らせるよう、銀行に協力していただくことも検討しています。ユーザーが割安感を感じられるシステムでなければ、普及しにくいですから。
例えば、蓄電システムが50万円したとします。住宅は単価が高いので、50万円という金額はある意味では小さな投資だと思いますし、30年 ローンで返済するならば、さらに負担は軽くなります。「この家の照明はすべて50万円のシステムで賄えますよ」と言うことができれば、プレミアム性も出ま すよね。蓄電池によって生まれるエネルギーの多様性をアピールしながら付加価値をつけ、普及させることができれば、それが本当のエコだと思っています。
先日ご招待していただいたエコラボの竣工披露式は、多くの方が先生の元に集い、とてもエネルギーに満ちたもので感動いたしました。先生のエネルギーの源は、どのようなところにあるのでしょうか。
自分のためでなく、人のために働くというコンセプトを持っておくことでしょうか。私は犬を3匹飼っているのですが、大きな家を建てて、庭で犬と遊びながら ブリーダーでも出来たら・・・という理想はあります。しかし一方で、こうして多くの方に期待や支援をいただいているからには、それに応えたいという思いがあり ます。大学には若い先生もたくさんいますので、皆で一緒に成長していきたいですよね。自分と関わる企業の方々も、それによってビジネスが上手くいっていた だけたらと思います。そういう気持ちで輪を広げていくことが大事なのだと思います。
本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
注1)エコラボ:東北大学が学内に建設した「環境科学研究科 研究棟」 東北大学川渡農場の杉を利用した木造建築物で、太陽光発電システムとリチウムイオン蓄電池、太陽熱利用空調システムを採用。また、DC(直流)ライフスペースで新たなライフスタイルが提案されています。