未知の領域を切り拓く「まずはやってみよう」の精神 住宅建築で研鑽した技術で、大型木造建築の可能性を広げたい

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豊かな暮らしを支える人たちのストーリーをお届けします。
私たちの家づくりや商品開発の裏側には、
情熱を注ぐ人々の存在があります。
ここでは、暮らしを豊かにする「人」に焦点を当て、
その価値観やこだわりをご紹介します。
さあ、私たちの世界へ一緒に潜りましょう。

佐藤さん

ハウジング事業部 特建営業部 建設課課長

・1992年 新卒入社

・ 盛岡支店、北洲総合研究所、仙台支店、福島支店などを経て現職

・ 1級施工管理技士、2級建築士、電気工事士

住宅建築の現場から、アフターメンテナンス、営業、クリニックや高齢者施設といった大型案件など、幅広い分野を経験してきた佐藤さん。現在は特建営業部に所属し、家族葬向け斎場のリノベーションや新築、温泉旅館や創業100年超の老舗料亭のリノベーションなど、北洲として初の取り組みに次々と挑戦しています。未知への挑戦を通じて得たものとは――。北洲の新たな挑戦を体現してきた佐藤さんが語りました。

現場志向の私が図面と向き合った日々
遠回りで築いた土台

 私はもともと、中学生の頃にはバイクをバラバラにして自分で組み立てるほど、ものづくりが大好きでした。進学の際、機械づくりと建築という二つの選択肢から、「形が大きく残るもの」として建築を選び、専門学校卒業後に北洲の門を叩きました。

 北洲を選んだのは「大手ゼネコンのように巨大なプロジェクトの一部に携わるのではなく、地元に根差し、建物の全体像を把握しながら主体的に関わりたい」と考えたからです。

 しかし、入社してすぐ、思いもよらない展開が待っていました。盛岡支店に現場配属してからわずか1、2カ月で北洲総合研究所への異動となったのです。ここは技術やデザインの研究開発を担う部門なのですが、現場を熱望していた私にとって、図面作成に没頭する日々は正直、葛藤の連続でしたね。

 それでも、今振り返ってみると、当時の北洲デザインを牽引した牧子芳正氏(現・名誉顧問)の仕事を間近で見られたことは、大きな財産でした。

 図面にどれほど緻密なディテールを書き込むべきか。その重要性をこの時期に徹底的に教え込まれたからこそ、その後の多様な現場を支える土台ができたのだと思っています。

多彩な業務経験が、技術者としての「引き出し」に

 その後、仙台支店へ配属になり、約10年にわたり多様な経験を積ませてもらいました。現場監督、確認申請業務、アフターメンテナンス、そしてコスト管理を担う積算業務まで、本当に幅広い業務に携わってきました。ここまで経験している社員は、なかなか珍しいんじゃないでしょうか。
 現場の進め方はもちろん、築年数が経った建物にどう対応するか、設計図からシビアに費用を算出する管理業務まで、住宅建築に関わるほぼすべての工程を実体験として積み重ねることができました。この時期に増やした「引き出し」があるからこそ、今、どんなに難しい案件に直面しても、じっくり考えを巡らせれば必ず解決の糸口が見える、と確信しています。

 仙台支店時代の後半からは、住宅の枠を超えて、クリニックや高齢者施設といった大型建築にも携わるようになりました。個人邸とはまた違い、地域の中で一つの象徴となり、多くの人が集まるのが公共建築です。そのやりがいに触れる中で、「自分が手掛けた建物を、より多くの人に見ていただきたい」という、技術者としての新たなギアが入りました。

「洗練されたモダン」と「木の温もり」の融合

 2017年、北洲がこれまで培ってきた技術力を中・大規模施設へと展開するために「特建営業部」が発足しました。そこで最初に直面した大きな挑戦が、家族葬向け斎場「みおくり邸宅」(株式会社清月記)のプロジェクトだったんです。もともとコンビニエンスストアだった建物をリノベーションするという、当時の私たちにとっては前例のない試みでした。

 施主様からは「いかにも葬祭会館という感じではない、デザイン性の高い建物にしたい」という強いご要望をいただきました。私は、求められているシャープでモダンなデザインを尊重しながらも、一方でコンセプトである「わが家で送るような、くつろぎの空間」をどう実現するため、北洲が誇る木のぬくもりや自然素材をいかに違和感なく調和させるか、チーム一丸となって心を砕きました。

 「玄関の一部に板を貼ってみませんか」といった具体的なご提案を一つひとつ重ねていく中で、少しずつですが、北洲らしい持ち味やデザインの良さを受け入れていただけるようになったんです。

 大きな転機が訪れたのは、4棟目の施工中のことでした。

 現場の前を通りかかった近隣の方が、「ここは高級料亭ですか?」と尋ねてこられたんです。その瞬間、その場にいたスタッフ全員が「やった!」と確信しましたね。

 洗練された外観が、街の風景に上質な佇まいとして溶け込んでいる。私たちの挑戦が正解だったと証明された瞬間でした。

コンビニエンスストアをリノベーションした家族葬向け斎場

信頼の連鎖が拓いた、歴史を未来へ繋ぐ仕事

 「みおくり邸宅」で築き上げた信頼が、また次の挑戦への扉を開いてくれました。2020年に手掛けた、清月記様の福島県土湯温泉の老舗旅館「土湯別邸 里の湯」のリノベーションです。北洲にとっても初めての旅館再生プロジェクトで、私は営業から設計、そして現場まで、すべてに深く関わらせてもらいました。

 全9室それぞれに異なるテーマを設けて、「和」と「モダン」が心地よく響き合う空間を構想しました。以前は硬質な素材によるモダンさを好まれていた施主様も、この時には自然素材が醸し出す上質な美しさを認めてくださって。私たちの提案を全面的に受け入れていただけるようになっていたことは、本当に冥利に尽きる経験でした。

北洲がリノベーションをてがけた福島県土湯温泉 老舗旅館「土湯別邸 里の湯」

 こうした実績の積み重ねが、老舗料亭「懐石料理 東洋館」のリノベーションへと結びつきました。東洋館は明治40年創業で、これまで多くの文化人に愛されてきた非常に歴史のある料亭です。2021年、コロナ禍で閉店の危機にあった同館を清月記様が引き継ぐ際、「東洋館も北洲にやらせてみよう」と声をかけていただいたんです。

 このお話をいただいた時は本当に嬉しくて、二つ返事で引き受けました。

 宮城県の文化的資産ともいえる東洋館のブランド力を高め、その歴史を未来へと引き継いでいく。この仕事を成し遂げられたことは、私の大きな誇りになっています。

「まずはやってみよう」北洲のDNAを、次世代へ繋ぎたい

 私には、一つ大切にしている確固たるスタンスがあります。それは、お客様のご要望に対して、最初から「できない」とは言わないことです。

 この自信の裏付けになっているのが、東日本大震災の半年前、営業未経験ながら成績トップを収めることができた経験です。現場を隅々まで知り尽くしているからこそ、お客様の疑問に的確に応え、不安を安心に変えることができ、結果に繋がったのだと思っています。

 これまで、未知のことにもたくさん挑戦してきました。そのたびに「お前なら大丈夫だ」と背中を押してくれた上司がいて、「まずはやってみよう」という北洲の文化がありました。そうしたDNAが、私の中に「できないものはない」という確信を育ててくれました。

 今は、北洲が住宅だけでなく、店舗やクリニックなど、さまざまな建築を手掛けられることをもっと多くの方に知ってほしいと考えています。

 かつて夢中でバイクを組み立てていた頃の好奇心は、今も失われていません。これからも技術を手に、北洲の可能性を広げながら街の風景を彩り続けていきたいですね。