サイディングプレカットで省力化、工期短縮を実現 「カイゼン」活動を社内外に広めて一層信頼を高めたい
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豊かな暮らしを支える人たちのストーリーをお届けします。
私たちの家づくりや商品開発の裏側には、
情熱を注ぐ人々の存在があります。
ここでは、暮らしを豊かにする「人」に焦点を当て、
その価値観やこだわりをご紹介します。
さあ、私たちの世界へ一緒に潜りましょう。

阿部さん
建設・資材事業部 HSP仙台工場 工場長
・2016年中途入社
・HSP仙台工場で機械オペレーター、現場計測作業、CADオペレーターを担当し、HSP埼玉工場工場長を経て、2022年より現職
中途で入社以来、サイディングプレカットHSPシステムに携わっている阿部さんは、異業種と共に取り組む改善活動でも先頭に立って推進しています。HSPシステムの魅力やカイゼン活動を通じて得た気づき、今後の目標などを聞きました。
ものづくりに携わりたい!
「サイディングプレカット」に惹かれ中途入社

宮城県内の工業高校の建築学科で学び、卒業後すぐに入社したのは家具工場でした。自分の手で家具づくりができることに魅力を感じ、約5年勤務しました。その後、学生時代に学んだ建築関係の分野で自分の力を発揮したいと考え、宮城県内の木材プレカット工場で約4年働きました。
北洲に中途採用で入社したのは2016年。新たな挑戦ができるものづくり企業を探している中で、「サイディングプレカット」という言葉に出合い、どんな技術だろうと興味を覚えたことが応募のきっかけでした。
HSPシステム -サイディングプレカット-

省力化、工期短縮などに有効なサイディングプレカット
出向いた現場や先輩から毎日必死で学ぶ

北洲が推進しているサイディングプレカットHSPシステム(以下、HSPシステム)は、計測データをもとにあらかじめ外壁材を工場でカットして現場に持ち込むことで、現場では貼り付け作業をするだけで済み、省力化と工期短縮が実現でき、職人の熟練度による品質のばらつきも出ません。さらに、現場での騒音や粉じんの発生も減らすことができる画期的な仕組みです。北洲では2012年、東日本大震災後の復興需要を背景にした職人不足の課題に対応できるサービスとしてHSPシステムに取り組み始めました。
私が入社したのはHSPシステム導入の4年後で、職人不足や高齢化がさらに進み、現場作業の効率化や省力化がますます必要とされていました。入社当時の私は、そもそも外壁についての知識はゼロ、貼り付け作業のノウハウはもちろんありません。機械オペレーター、現場計測作業、CADオペレーターとしてそれぞれ約1年ずつ担当し、現場に出向いたり先輩たちに教えてもらったりしながら毎日必死で勉強しました。
現在はHSP仙台工場の工場長として、工程管理やマネジメント、現場計測作業、CAD入力作業に携わっています。建設業界では人手不足や高齢化、環境問題への対応が年々大きな課題となる中で、HSPシステムがその解決に役立っていると実感しています。
現場の声を丁寧に聞き取り不安を解消
「仕上がりがきれい」職人さんの言葉に大きな喜び

建設業界の課題解決に有効なHSPシステムですが、導入当初は現場の職人さんから「現場で調整できない不便さ」を訴える声や、「加工ミスがあったらどうするのか」といった不安の声があり、なかなか受け入れてもらえず苦労しました。職人さんが現場でどんな不便さを感じているのか丁寧に聞き取り、計測やCAD入力の精度を高めて改善を重ね、徐々に理解と協力を得られるようになりました。
また、物件ごとに異なる納まりや仕様に対応できる柔軟性の確保には常に神経を使っています。建設会社によって仕様はさまざまで標準化するのが難しい部分があり、条件は毎回異なります。社内の連携やスケジュール調整に細かく気を配り、微調整により精度を保ち、効率よく加工して対応しています。
実際に現場の職人さんたちから「作業を早く終えることができた」「仕上がりがきれいだった」と言ってもらえると、この仕事の喜びを実感します。仕上がりのきれいさは現場計測とCADの精度の高さの証ですから。
今後もより多くの現場でHSPシステムを受け入れてもらえるよう、現場との連携を強化し、さらなる改善を続けていきたいと考えています。
仙台経済同友会の「カイゼン活動」に参加
異業種企業と共に「カイゼン」のノウハウと重要性を学ぶ

2023年4月から2年間、当社社長もメンバーである仙台経済同友会の「ものづくり委員会」が取り組む「カイゼン活動」に参加したことは、自分自身にとっても非常に大きな経験になりました。
「カイゼン活動」は、会員企業がトヨタ自動車東日本株式会社様(本社・宮城県大衡村)とリーダー企業の方々と一緒に実践する活動を通じて、仙台の企業を発展・進化させていくことを目指す取り組みです。トヨタ自動車東日本様、すでに「カイゼン活動」に取り組んだリーダー企業の皆様とともに、モデル企業の現場の改善活動に取り組み、そのプロセスや成果を同委員会で発表・共有します。当社は今回、モデル企業としてHSP仙台工場でさまざまな改善活動を行いました。
まず取り組んだのは、工具置き場の改善です。当時は壁際に工具類が置いてあり、工場内に点在する設備までの歩行距離が長くなっていた上に、工具箱に乱雑に保管され探しにくい難点がありました。どうすれば使いやすく、きれいに保管できるのか――。トヨタ自動車東日本様やリーダー企業様、工場で働く社員とともに意見を出し合い、工具置き場を工場の中央に移し、各設備までの移動時間が短縮できるように動線を改善。さらに、遊休部材を使って新たに工具棚を作製し、工具別に保管位置を決めてひと目でわかるようにしました。
他にも、建物の角の部分を保護する出隅材の製作を効率化するために出隅用台車を作製したり、加工用モニターの文字が読み取りやすいように設置場所を変更したりするなどの改善を行いました。
活動2年目に開発した「吸着装置」
負担の大きい作業を大幅に効率化

活動2年目に取り組んだのは、1パレット80枚で納入される外壁材を1枚ずつにばらしていく段取り作業の改善です。外壁材は1枚の重さが25~30㌔あり、2人1組で作業していました。そのため、社員2人がそろうまで30~40分の待ち時間が生じる上、作業時にはペアを組む相手への配慮や腰への負担といった問題にも悩まされていました。
そこで、時間に縛られることなく1人で作業できるようにすることを目標に、さまざまな意見を出し合いました。私からすればどの意見も正解で1つにまとめるのが大変でしたが、トヨタ自動車東日本様の助言で、①コスト②改善効果③製作時間を点数化し、総合点が最も高い方法を採用することにしました。
その結果、約8カ月かけて開発したのが「吸着装置」です。工場内の柱を利用してスライドアームを設置し、市販品などを研究して自作した吸着装置を取り付け、エアーホイストで外壁材を持ち上げて移動させる仕組みです。吸着装置を自作したことでコストを抑え、待ち時間が不要になったことで作業時間も大幅に短縮でき、身体への負担がなくなり1人で作業できるようになりました。ゼロからのものづくりという貴重な経験をしたことで、頭の中で思い描いたものがカタチになっていく過程に携われる楽しさとうれしさを覚えました。
改善を他部署にも広げる「横展」の大切さ
活動の中で他業種への「横展」を実現
改善したことを社内で共有し、他の部署にも広げる「横展」の重要さも学びました。トヨタ自動車東日本様では、改善したらそこで終わりではなく、必ずその次に「横展」を考えるのが企業文化になっています。
実は「横展」に関して、活動中にうれしいことがありました。工具類に貼っているテプラがはがれやすいのを改善しようと、紫外線を当てると硬化するレジン液を塗りUVライトで固めてはがれないようにし、使いやすさと作業性を向上させたところ、トヨタ自動車東日本様やリーダー企業様でも採用していただけることになったのです。思いがけず業種の枠を超えた「横展」が実現しました。
今後も改善活動を実践し続けることはもちろんですが、同時に当工場が行った改善を他部署に紹介したりするなど、積極的に情報提供していきたいと思います。
「カイゼン」を積み重ねさらなる効率化・品質向上へ
「カイゼン活動」の経験を活かし地域に貢献したい

活動の当初は、正直なところ、自分たちが良かれと思うやり方に対して異業種の方々からさまざまな指摘を受けることに戸惑いもありました。しかし、自分たちにはなかった視点から新たな発想や解決策が得られることが分かり、私を含め携わった社員たちに改善の意識が芽生え、以前より柔軟に物事を考えられるようになりました。
今後は、「今がベストと決めつけず、『もっと良くできるのでは』と常に考える」「小さな改善の積み重ねが、効率化・品質向上・コスト削減につながる」ことを肝に銘じて、業務に励みたいと思います。
2年間の活動を終了し、北洲はリーダー企業としてモデル企業をサポートする立場になりました。早速2025年6月から、宮城県内にある他業種の会社様のサポート役を務め、私は月2回モデル企業様に足を運んでいます。北洲の代表として、地元企業の発展と進化のお役に立てるよう力を尽くしたいと考えています。
私たち北洲が「カイゼン活動」に取り組んでいることを広く知っていただくことができれば、会社の信頼をさらに高めることができ、それがHSPシステムの顧客を増やし、生産量の安定にもつながるのではないかと思います。